旅館から学んだ3つのホスピタリティ
私が開業に携わった美容院のコンセプトは「世帯年収1000万以上で35歳以上の女性」をターゲットにしました。
客単価としては1万円としていたので、そのレベルのお客様がいらっしゃっても居心地のよいサービスを提供する必要がありました。
そういった方が居心地がよいと感じるサービスとは何なのか、そこに頭を絞りました。
私は普段から街のいたるところで見かける広告や、受けるサービスから多くのヒントを得るようにしています。
なぜなら、それらのアイデアはプロが頭を絞って考えたものであるからです。
私ひとりの頭では到底考えつかないようなアイデアがたくさん詰まっています。
言ってみれば、街は「知識と知恵の宝庫」なのです。
使わない手はありません。
さて、先ほどのお客様は、いわゆるハイソサエティに分類される層と言えます。
こういった方が満足するホスピタリティを提供するところはどこかを考えました。
すると、「旅館」というキーワードが頭に浮かんだのです。
美容師さんであれば、美容院からそういったアイデアを学ぼうとします。
美容師さんだけでなく、ありとあらゆる業種で働く方々は、ついつい同業種から学ぼうとします。
しかし、使えるアイデアとは往々にして異業種にあります。
「旅館」から私はさまざまなホスピタリティを学ばせていただきました。
高級旅館とリーズナブルな旅館とでは何が違うのか、その違いこそがハイソサエティの女性を満足させるアイデアだったのです。
私が特に感心した高級旅館にだけあるアイデアは3つあります。
1)プライベート感
2)見てもらっている感
3)季節感
です。
プライベート感
高級旅館に行くと、どれだけ混んでいる時期でも、他のお客様と館内で出会う機会があまりありません。
浴室が混んでいるというのもありませんし、中には部屋に浴室がある場合もあります。
また、食事も部屋食です。
館外に出なくても、部屋でゆっくりとするだけで、十分に満足することができます。
そのため繁忙期でも喧騒に悩まされることはありません。
また、大浴場に行っても、自分のスリッパがわかるように、目印をつけられるようになっています。
自分のスリッパに洗濯ばさみをつけておくだけなのですが、こういったちょっとしたプライベート感にホスピタリティを感じます。
見てもらっている感
また、仲居さんやおかみさんとが、常に自分のことを見てくれている感があります。
前回来た時のことを覚えていてくれたり、足りないものや、リクエストがあれば即座に対応してくれます。
さらに、来てから帰るまで同じ仲居さんがケアをしてくれます。
もちろん仲居さんは他のお客様も同時にケアをしているのでしょうが、まるで自分のためだけにそこに居てくれるような錯覚を覚えます。
これはうれしく、贅沢な気分になります。
高い宿泊料を払っても、高くないと感じさせてくれるのです。
季節感
高級旅館に行くと、さりげなく季節感を感じられる演出がなされています。
料理はもちろんですが、生けてある花々、おかみさんや仲居さんの着ている着物、掛け軸、のれん、様々なところに季節の演出があります。
そして、それらについて仲居さんやおかみさんと話をすることで、私が知らない知識を学ばせていただくことができます。
また、「この季節であれば、ここへ行くとよいですよ」といった季節に応じた観光の仕方を教えていただくこともできます。
これらのアイデアは美容院だけを見ていてもなかなか気づけることではありません。
あなたがターゲットにしているお客様の行動を分析し、何に対して価値を感じるのかを考えてみましょう。
そしてその価値はどこにあるのかを見つけ、実際にその価値を体験してください。
そうすることによって、その価値を美容院に還元できるはずです。